
といちんさ
かわいらしい小鳥のように
「といちんさ」は五箇山地方に生息する日本一小さい鳥「サイチン(みそさざい)」が、水屋の樋(とい)のそばで遊んでいる様子を「トイのサイチン」と言っていたものが詰まって「といちんさ」となりました。春を告げるサイチンの歯切れの良い鳴き声や軽やかな動きが唄のテンポや明るさにも現れています。
また、娘を持つ母親が、自分の娘もこの小鳥のようにかいがいしく働く嫁になるようにという願いを込めてこの唄をうたっていました。歌詞の中には母親が若かりし頃を思い出している場面もあります。たとえば「五尺」の袖は、農作業に出る若い女性の精一杯のおしゃれだったようです。そんな女性に憧れる若い男性が紙すき小屋の窓に穴を開けてのぞくため、サイチンのさえずりで朝が訪れると、まずその穴ふさぎからしなければならない、とうたっています。
三味線、胡弓、笛、太鼓などを用いた明るい伴奏で、女性がもんぺ姿で楽しそうに手踊りする姿は、サイチンがさえずり、餌をついばんだり飛び回ったりする様子を思わせます。
歌詞
樋のサイチン機(はた)織る音に
ア トイチン トイチン トイチンサー
ヤーサレーチ トチレチ トイチンサ トイチンサ
拍子そろえてサーサうたいだす
ア やれかけはやせよ トイチンサ トイチンレチヤサレチ
わしがナー 若いときゃ 五尺の袖で
道のナ 小草も サーサなびかせた
鳥がナーうたえば
早や夜も明けて
紙屋ナーのぞきの
サーサー窓もはる
声はナーかれても
まだ木(気)は枯れぬ
藤のナー花咲く
サーサほととぎす
来いナーと言われて
手で招かれず
笹のナー五笹(いささ)の
サーサ葉で招く